このゲームに一言キャッチフレーズをつけるとしたら?
食べ物に譬えると?
ちょっと酸味の強い
「海外製の酸っぱいジャム入りハードグミ」
どんな人向け?
恐怖演出でドキッとしたい人。
(インディーズゲームで)ちょっと不都合があっても許せる人。
概要
「Location Withheld」は3Dのフリーホラーゲームです。無料でダウンロードできますが、寄付をすることもできます。
PC(Windows/Mac)で遊べるインディーズゲームで、インストールは不要です。DL(ダウンロード)するファイルは1GB未満ですが、解凍すると約2GBほどとなるので、少しHDDなどのストレージ容量に気をつけておいたほうがいいかもしれません。
謎解き
ホラーゲームではあるのですがパズルを解く要素があり、ここがこの「Location Withheld」の難しいところといえます。全体的には雰囲気がしっかり作り込まれており、「部屋のなかで一歩も動かない」というシステムのゲームでありながら、ひとつのインディーズゲームとして完成されています。
言語は英語のみで、ゲームのなかではいくつかの資料を見ることができます。クリアするだけであれば厳密には英語が必要ではありません。しかしより楽しむために、「自分で情報を集めて解く」「ストーリーを汲む」という点を踏まえるのであれば、ある程度は英語の理解力があったほうがいいでしょう。
バグが発生することも?
ゲーム開始時はまずタイトルが表示されます。少し注意を促しておきたいのは、このタイトル画面で「START」をクリックしてもなにも反応しないときがあることです。
私は検証やスクリーンショット撮影のために何度かプレイを繰り返していますが、通常時は「START」を押した直後に字幕が表示され、部屋のなかへと画面遷移します。しかしこれが発生しない(しにくい?)ときがあり、しばらく待っても字幕が表示されないことがあるのです。
これが起動不能のバグなのか、単に遅延のバグなのかはハッキリとしません。しかし一度ゲームをシャットダウンして再起動、そして再度STARTを押すとなんとか開始できるかと思われます。
このゲームでバグとおぼしき現象は、このSTART時のものくらいでしょうか。出鼻をくじかれるのが嫌いな方は、少し慎重になってプレイするかしないかを決めておいたほうがいいかもしれません。
操作はマウス&キーボード
操作方法はマウスとキーボードだけです。ゲームシステム上「移動」の概念がなく、用意されているマップは主人公の部屋とおぼしき場所のみです。右クリックを押すことで視点固定と固定解除を繰り返すというやや特殊な操作法です。
キーボードは主にパズルの答えを入力するのに使用します。また文書などを手にしている状態でスペースキーを押すことで、画面に大きくデジタル表示で固定させることができます。こうした操作方法であるため、ゲームのジャンルとして「Point and Click(ポイント&クリック)」と呼ばれる探索型ゲームのひとつとも見なせるでしょう。
難易度はそこそこ
クリア所要時間は、およそ10分から1時間と設定しました。これはこの「Location Withheld」の難しさがパズルにあり、それをクリアできるかどうかで時間が大きく変わるからです。苦手な方であれば、1日かけても解けないということがあるかもしれません。
かなり人によって変動することが考えられるので、難易度は低~中と判断し、点数は42(100点中)としました。これには異論がある人も多いかもしれません。
もしパズルに自信がない方や、解けないことでストレスを感じる傾向にある方は、「あらかじめパズルを解かなくて済むよう答えをしっておく」か、あえて「プレイをしない」という選択をとることも重要でしょう(ゲームは楽しむためのものだからです)。
またエンディングが複数あるため、すべてを見る完全クリアを果たすには、より時間がかかることが想定されます。
しかしエンディングの分岐は複雑ではなく、またパズルの答えは自動生成などで変化することがないため、早い段階でパズルの答えがわかってしまえば、(現在発見されている)すべてのエンディングを30分以内で見ることも可能でしょう。そのためひとつのエンディングを見るだけより完全クリアを果たす所要時間のほうが、人によって振れ幅が大きくなってしまうといえます。
食べ物に譬えると?
ではさらに踏み込んだ解釈をしてみましょう。
この「Location Withheld」を食べ物などに譬えると、どのようなものになるのでしょうか? その答えのひとつは「海外製の酸っぱいジャム入りハードグミ」です。
- 海外製の酸っぱいジャム入りハードグミ
- 噛みにくい。
- パズルが難しい。
- 英語がわからないと食べて安全かわからない。
- 英語でパズルが解けない。
- 食べてみればわかる。実際は、英語かどうかは無関係。
- 実際は英語がわからずとも解ける。
- 食べ慣れればすごく食べやすい。
- 答えがわかってしまえば短時間でクリア可。
- グミのなかに酸っぱいジャム。
- 固さで苦戦してたら急に酸っぱくてビックリ。
- ホラー演出が急に来る。
- 酸っぱさもすぐに慣れる。
- 恐怖演出もすぐに慣れる。
- 噛みにくい。
この「Location Withheld」の特徴は、パズルの解きにくさにあるといえるでしょう。この「Location Withheld」のシステム設計上の肝というわけではないとは察せますが、結果的にこのパズルの難しさが大きな関門となっています。
これはいわば「そうしようと考えたわけではないけど結果的にとても固くなってしまったグミ」のようなものです。固いことを主張したかったのではなく、おそらくちょっとした他のホラーゲームとの差別化の要素のひとつだったのかもしれませんが、結果的に私たちが食べてみると固さがかなり目立つように仕上がっています。
もちろん作者が意図的に固く(難しく)しようとした可能性はありますが、この固さはハードグミといってもさすがに必要ないでしょう。人によっては歯が欠けかねません。
さて、私たち日本人にとってはその固さ以前にちょっとした問題があります。海外製でパッケージが英語で書かれているため、このグミがどれくらい安全かわからないのです。ときには安全が確保されていないものもあるからです。
この「Location Withheld」というグミは、とても固いということでした。パッケージに書かれている文言がわからない人たちにとっては、この固さが意図して設計されたものなのか、それとも製造過程の不具合で固くなってしまったのかがわからず、不安になってしまうのです。
つまり日本人のプレイヤーにとっては、誰かが「これはこういう固いグミなんですよ」「これはこういう解きにくいパズルがあるゲームなんですよ」と明言しないと、仕様なのかバグなのかわからない不安があるのです。
もちろん私が明言しておきましょう、「このグミが固いのはそういう設計ですので、ちゃんと食べられるグミですよ」と。
私が明言するまでもなく、別の答え方もあります。それは「食べ方がわかれば別にどうってことないですよ」という答え方です。これはつまり「パズルの解き方がわかれば別にどうってことないですよ」という答え方と同じです。
実際にはこのエントリではネタバレ防止で答えを示しはしませんが、別のエントリで答えを明記しておくので、とりあえずクリアをしたい方はそちらをご覧になるのもいいかもしれません。
またこの「Location Withheld」のパズルの答えは、自動生成などで変化することがないため、一度答えがわかってしまえばそれを入力することですぐにクリアできます。実際にはスピードランやRTAのように早くクリアすることを目指せば、1分程度でクリアできるかもしれません。
これはグミでいうと、製造上グミに割れ目や接合部分のような箇所があり、そこを噛むことで簡単に噛み砕くことができるようなものです。ちょっとしたコツがあれば、簡単に食べられるグミだということです。
とはいっても、キャンディーをバリバリガリガリ噛み砕いては新しいキャンディーを口にほうりこむような食べ方が、はたして正しい食べ方であるのかどうかという疑問はありますが。
この「Location Withheld」はホラーゲームです。スクリーンショットから見て雰囲気がよさそうだと始めてみるプレイヤーもいることでしょう。しかし実際にプレイしてみると、ホラーがどうという以前にパズルが難しくてクリアできない、ということにムキになってしまいかねないゲームです。
ゲームの恐怖演出というのは、「強い刺激」です。辛味であれ酸味であれ苦味であれ、瞬時に襲ってくる強い刺激やじわじわと押し寄せてくる刺激を、人々は求めます。この「Location Withheld」の恐怖演出というのは2点に要約され、それはおおざっぱな「雰囲気」と終盤の急な恐怖演出の2つと分けられます。
おおざっぱな雰囲気の恐怖演出は、グミの周囲に付着している酸っぱいパウダーといいかえられます。しかしそこまで強い刺激ではありません。
やはり顕著なのは、終盤の恐怖演出でしょう。これはグミのなかに埋め込まれた酸っぱいジャムのようなものです。
この酸っぱいジャムは、グミの周りのパウダーに比べるとたしかに酸味が強くされているものの、慣れてしまえばなんてことはないものです。しかしグミの固さに苦戦していてやっと「噛み砕けた!」というときに訪れるその酸味は、やはり急激で驚いてしまうでしょう。ある意味では、「ジャムの酸味を実際に激烈にすることなく、固いグミのなかに隠すことで食べる人の『予想』を裏切り、効果的に刺激を体験させている」というふうに評価することもできます。
また前述しましたが、この「Location Withheld」では開始時に進行不能もしくは遅延とおぼしきバグがあります。これは重度ではないものの、人によっては強いストレスになるかもしれません。たとえるなら「開けにくいお菓子のパッケージ」のようなものです。真ん中を引っ張っても開かず、ギザギザから開けようとしてもどうにもならない、そんなパッケージのようなものです。対策としては「とりあえずがんばってみてください」「何度かがんばってみてください」としかいいようがないので、この点については「プレイヤーの環境が影響しているかもしれない」とあまり効果的ではない可能性を示唆することしかできません。やはり制作者側でなんとかしていただければありがたいものですが、プレイヤーとしてはあまり多くの対策は打てないでしょう。
全体的には恐怖演出がしっかりしていて、パズルの難しさもがんばれば解けるものですし、ゲームとしてはしっかり成立していたと見なせます。ただやはり「固いグミ」にしても「酸っぱいジャム」にしても、何度も噛み締められるような味わいがあるわけではなく、「刺激の強さ」を感じるための「一度の激烈な体験」を求める人向けのゲームでしょう。
ゲームの情報
タイトル | Location Withheld |
開発 | Bryce Bucher |
オススメ度 | A<GOOD>:★★ |
リリース日 | 2018/12/13 |
価格 | $3.99 |
次元 | 3D(3次元) |
ジャンル | ホラーADV |
特徴 | パズル/ポイント&クリック/雰囲気/シングル |
視点 | FPS視点 |
グラフィック | リアル系3D |
操作方法 | マウス&キーボード |
言語 | 英語 |
インストール | 不要 |
ファイル容量 | 約648MB<アーカイブ> / 約1.97GB<解凍後> |
さいごに
この「Location Withheld」は、一般のプレイヤーの方がするように「一回もしくは一通りプレイする」というときには、パズルの要素がかなり重きを占めることになるでしょう。
私のように検証も含めてプレイする場合は、その重さがだんだんと薄れてきて、全体的な評価をしがちになります。
どちらが偏っているというわけではありません。ただ健全に「極度に不満を感じることなく」プレイするためには、このゲームに関してはネタバレであるパズルの答えを探るのも、ひとつの手だといえるかもしれません。