「ミノニヨクシティ」#35【考察】境目の目とは?(前)【ネタバレ】

グラフィックボード
「ミノニヨクシティ」の考察です。ゲーム内で登場する「境目の目」について考えていきます。

こんにちは、Caffeineです。
今回は「ミノニヨクシティ」に何度も登場する「境目の目」について考察していきます!
あまり意味がわからないので、意外とスルーしてしまっているところではないでしょうか?

前回のエントリ(【考察】ミノニヨクシティとは?):
「ミノニヨクシティ」#34【考察】箱庭とは? そしてミノニヨクシティとは?【ネタバレ】
「ミノニヨクシティ」の考察です。ミノニヨクシティとはそもそもなんであるのかについて考察していきます。 こんにちは、Caffeineです。 今回は「ミノニヨクシティ」のタイトルにもなっている箱庭、ミノニヨクシティについて考察していきます!...

「境目の目」とは?

「境目の目」は、おおめだま公民館にある絵画の名称です。通常の白目のところが黒くなっていて、黒目のところが赤くなっている禍々しい絵です。絵画自体に大きな情報はないのですが、これに似た模様がゲーム内の至るところで確認できます。

各地の「境目の目」

「境目の目」に似た絵はミノニヨクシティのみならず、海底都市などでも見つけることができます。気になるのは形状が似ていることだけではなく、「me」もしくは「you」という文字が書かれているところです。

おおまかな特徴をまとめておきましょう。

  • 店:ゲーム冒頭から確認できる模様。ピギュラの店舗予定地のなかに描かれている。
  • 海底都市:海底都市の人のいない家に描かれている。
  • カラコロ宅:ノーマルエンドでカラコロがいなくなったとき彼の八百屋に描かれる。
  • 店の奥:エンディング前に訪れる店の最奥にある部屋に描かれている。

さらに細かく説明すると、ピギュラの店舗予定地には4つの部屋があります。1つめはドアから入ってすぐの「商品陳列棚の部屋」、その奥が2つめの「物置の部屋」で、その物置にはさらに奥へと続くドアが2つあります。そのうち左側のドアが「ノーマルエンド時に入る部屋」、右側のドアが「トゥルーエンド時に入る部屋」へと繋がっています。

このうち1つめの陳列棚のある部屋と2つめの物置部屋には、「me」と書かれた絵が現れます。そしてエンディングのノーマル・トゥルーの分岐を問わず最奥にある部屋には「you」と書かれた絵が現れます。

「境目の目」の意味とは?

まずは「境目の目」という名前について考えていきましょう。なぜそういう名前になっているのでしょうか。
ひとまず実際にものを見る「目」と、境界線を意味するときの「境目」という言葉をかけている名称だということはわかります。真っ先に不思議に思うのは「なんの境目か」「誰の目か」ということでしょう。

実はこれに対する解答はありません。あまりに情報が足りないのです。「ミノニヨクシティ」という世界について考えてみると、「境目」というのは「あの世とこの世の境目」だと考えることができます。もしくはより深く、「死後の世界と裏世界の境目」だと捉えることも可能でしょう。しかし「誰の目か」という問いには、なんら情報がないのです。

「目」というと、やはり見る器官であるというイメージから、「監視するもの」として「監視の目」や「人の目」と表現することがあります。またお天道様のように、神様と似た形で悪いことをしないように見ている、という形式もあるでしょう。

プレイヤーの目?

可能性は低いのですが、「プレイヤーの目」という捉え方もあります。こうしたADVゲームなどでは基本的に常にプレイヤーは「カメラ」を通してゲーム内の世界を見ていくことになります。これは3Dゲームを遊ぶときにより顕著で、FPS視点などカメラを自分で操作できるタイプのゲームではより顕著です。この「カメラ」がないと、私たちはゲーム内の世界のものをなにひとつ見ることができないのです。

このように考えると「誰の目か」という問いに「プレイヤーの目」と答えることもできるのですが、この説では「me」や「you」といった言葉に対してなにも説明できません。そのため考え方としてはおもしろいのですが、可能性としてはかなり低いといえるでしょう。

ゲームと現実の境目?

しかしこう考えることができるなら、「境目」が「ゲームと現実の境目」かもしれないと考えるところまで到達できます。

おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ

ネット上でも有名なニーチェの言葉です。この句を借りるなら、ゲームをプレイする以上 私たちプレイヤーはゲームに遊ばれているのです。そしてゲーム内の「境目の目」から見られているかもしれないのです。

「me」と「you」の違いは?

次に「me」と「you」の文字について考えてみましょう。
実のところ「me」と「you」の文字の違いについて、明確に条件分けできるほど情報が多いわけではありません。

特に「you」と表記されているのは、実質的にピギュラの店舗予定地の最奥の部屋だけです。エンドの分岐によって変化しないため、「エンド直前に見られる『境目の目』」の絵にだけ「you」と書かれているとくくることができます。

「me」は住人が消えると現れる

それに対して「me」の字の「境目の目」はいくつか存在するため、ある程度は推測することができます。上の画像にまとめた「me」と書かれている3つの部屋は、いずれも期間の隔たりに差はあると考えられるものの、「その部屋の住人が自覚して消えた」ということが条件であると見なすことができます。

ことさら特徴的なのは、カラコロの八百屋に現れる絵です。もちろんこれはカラコロがいなくなる以前にはなかったものですし、カラコロが自覚してショータとしてミノニヨクシティに留まるルートでも現れることはありません。そのため「前住人が自覚して消えた」というのが条件であると考えることができるのです。

さて、「me」はなにを意味するのでしょうか。たとえ英語に詳しくない方であっても、「me」と「you」くらいはおそらくわかることでしょう。「me」が「私」で、「you」が「あなた」です。おそらく「me」とは自覚して消えた人物が自分自身のことをさしているのでしょう。

Forget-me-not

たとえばすぐに思い浮かぶ説の1つを挙げるなら、勿忘草(ワスレナグサ)の英名である「Forget-me-not」などの「me」に近いのではないか、と考えることができます。「me」という言葉は、ただそれが書かれているだけで「私のことを忘れないで」という意味合いになります。

引っ越すときなにを書き残す?

たとえば引っ越しするときでも構いません、なにか一語だけ床に書き残していけるとしたら(ふつうは許されませんが)、なにを書き残すでしょう。しかもこの絵が残されている空き家は、家具や段ボールなどがそのまま置かれているようです。そうした物品が残っている状態で、一体なにを書き残すでしょうか。

思い入れがなければなにも書かない

その場所に思い入れがなければ、書き残す権利があってもなにも書かないでしょう。また次にその部屋に入る人になにも伝えたいことがなければ、やはり書き残しません。

つまり残す言葉の内容や意味にかかわらず、前の住人が残したとわかる形で残すこと自体が、「私はここにいたんだ」という証になります。
(後の住人にとっては迷惑でしかありませんが)

大事なものがあればそれについて書く

もし私たちゲーム好きのゲーマーが夜逃げのように家具や持ち物を置いたまま家を出なくてはいけなくなったら、PCやゲームハードに「大切に使ってください」など書き残すかもしれません。恋人からもらったプレゼントなどがあれば、やはり壊さずに大事に扱ってほしいなどと思うかもしれません。

しかし「me」と書き残すのは、そうした物品に思い入れがあるわけではなく、「私自身がここにいたことを書き残しておきたい」という思いがあった、ということではないでしょうか。

「me」は「他の誰でもない『私』」

ましてや引っ越しをして去ろうとしている部屋に「me」と残すのは、「誰がいたか」ではなく「私がいた」とだけ残す方法です。

先ほどのようにゲーマーがなにか書き残すとすれば、特にそれが単語1つだけであったなら、「me」ではなく「game」でしょう。「me」では絶対にPCやハードを大切にしてくれという意図は伝わりませんが、「game」であれば僅かながらでも伝わる可能性があります。

そう考えてみると、勿忘草(Forget-me-not)のように、「私はここからいなくなるけど、忘れないでいてほしい」「いたということに気づいてほしい」というメッセージが込められているのかもしれません。

後悔

少し視点を変えるならば、「私はここにいたのに」という目線から見ることもできます。

基本的にこの世界では、自覚したものは輪廻道へ送られるのが筋だそうです。輪廻道は記憶が薄れていくほど長い時間を旅し、ときにはその苦痛に耐えかねて宿から離れることができずにモノノケになることもあるようです。

特にエンディング直前の幽霊退治として店舗予定地の奥の部屋に入るとき、前住人からの電話がかかってきて、「つらくて悲しくて暴れて輪廻道へ旅に出た」「でも私には無理だった」「やっぱりそこがよかった」というような内容の話を(一方的に)していきます。

このことから「私の本当の居場所はそこだったのに」という後悔の念が表れていると捉えることもできます。

「次は……」

また別の観点で考えてみると、「you」という言葉からの逆算ではあるのですが、「me」は「私の番だった」という捉え方もできます。これはエンディング前にかかってくる電話で、2つめの物置部屋ではなくさらにその奥の部屋に入ったときにかかってくる電話の内容から、考えることができます。

ノーマル・トゥルーのエンドに関わらずこの電話の冒頭は、「もしもし」「私は前にそこに住んでた」「だけど今は……ああ苦しいよう」といった内容で同じになっています。
ノーマルエンドとして左側の最奥の部屋に入ったときの電話は、そこから「平穏は優しかったけど嘘つきで」「だけど」「騙されたままでいたほうがよかったのかなぁ」と続きます。

トゥルーエンドとして右側の最奥の部屋に入ったときの電話は、「わたしはもうすぐ消えちゃうけど」「あなたにも」「自覚という絶望がおとずれますように」と続きます。
この恨み言を聞いたあとで考えてみると、「you」は「次はお前の番だ」と考えることもできるのです。

死者として死後の世界に住む以上、自覚するのは時間の問題です。時間の長い短いはあれど、いずれ自覚するでしょう。つまり自覚するのは必然だといえるのです。そうなると自覚した者からまだ自覚しておらずこれから自覚する予定の者への、「次はお前だ」というメッセージだと捉えることができるのです。

必ずしも恨み言とは限らない

ピギュラの店の前住人はこれを恨み言としていっているようです。しかし「次はあなたの番」という言葉が必ずしも否定的な意味になるとは限りません。この前住人は自分が失敗したのを他人に押しつけようという魂胆であったようですが、人によっては「あなたはうまくやって」というふうに願いを込めることもあるでしょう。

次のエントリ

次回のエントリでは、引き続き「境目の目」について考察を続けていきます。

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