「ミノニヨクシティ」#40【考察】生前とはなんなのか?【ネタバレ】

ゲーム考察
「ミノニヨクシティ」の考察です。いったい「生前」とはなんなのでしょうか?

こんにちは、Caffeineです。
長かった「ミノニヨクシティ」の考察も今回でおしまいです! 本作が投げかけてくる問いかけについて考えていきましょう!

前回のエントリ(【考察】この世は本当にこの世? 後編):
「ミノニヨクシティ」#39【考察】私たちのこの世界は本当に「この世」なのか?(後)【ネタバレ】
「ミノニヨクシティ」の考察です。私たちは本当に自分たちの世界を自覚できているのでしょうか? こんにちは、Caffeineです。 「ミノニヨクシティ」をプレイすることで、私たちはどんな問いを受けているのでしょうか? 一緒に考えていきましょ...

この世は本当に「この世」か?

前回まで「この世は本当に『この世』なのか?」ということについて考察してきました。今回は別の観点からの「生前」とはむしろなんなのか、という問いについて考えてみましょう。

「生前」とは?

ゲーム内では言葉として直接現れることはないようですが、ミノニヨクシティの世界の住人はすべて死んだ存在です。ジャミガを見ると人間なのか不確かな住人もいるようですが、住人たちは死んだ存在だと見なすのが自然です。

そして「幻」や凶新聞などの情報を見ると、住人たちはそれぞれ死ぬ前の世界で印象的だったこと、特に死因に密接に関わることなどを、たとえ自覚していなくても記憶しているようです。この「生前」の記憶とはなんなのでしょうか?

これは考察というより、「なぜゲーム内でそうした表現をしたのか?」という動機を探る行為です。すなわち作者の意図を考える行為です。考察をゲーム内の情報から真実を探る行為だと定義するなら、やや考察を超えた行為であることを踏まえておいてください。人によっては突飛に感じられるかもしれません。

「今」が基準であることを多くの人が疑わない

話を戻しましょう。このミノニヨクシティの世界の住人の生前とは、いわば私たちゲーム外の現実の世界の住人にとっての「前世」に近いのではないでしょうか。

私たちはふつう「今の人生」を基準に考えます。人によっては輪廻転生を信じ、前世と来世のことをも考えます。しかし基準はおおむね「今」です。この認識はおそらくミノニヨクシティの世界の住人も同じなのでしょう。

通常、ゲーム内で自覚した人間は輪廻道に入り生まれ変わりの旅に出るようです。そしてそれを拒絶し死後の世界に留まったのが、ミノニヨクシティにいる自覚した住人などです。このゲーム内の設定とゲーム外の現実の私たちの世界を照らし合わせると、どうでしょう、私たちは「自覚」していないということになります。私たちはユウヤやショータなど自覚した存在なのではなく、自覚していないピギュラでありカラコロなのです。

こうした「自覚」をゲーム外の現実の世界に適用してみると、99%以上が自覚などしていないといえるのではないのでしょうか。そもそも私たちにとって「前世を自覚する」ないし「前世を確信する」というのは、どちらかというとオカルトに近い「やばい」発想です。それは自覚していないのが普通だからです。

ここでもう少し考えておきたいのは、だとすれば「私たちは自覚すべきか」ということです。このゲームには「現実の世界の人間も前世を自覚すべきである」というメッセージがこめられているのか、ということです。私はこれについて、「そうではない」と考えます。なぜならゲーム内では、「自覚する」ことそのものは特に肯定されていないからです。

「自覚」したとき私たちは耐えられるか?

ノーマルエンドルートの6日めの夜にピギュラが見る夢では、血のついたような槌を調べるとこうしたメッセージが表示されます。

血のついた槌:

自覚してはいけない。
今の貴方では危険だから。

ゲーム内では明文されているところは少ないのですが、「自覚するのは危険な行為」というのは端々から感じられます。そしてこのメッセージからは、「自覚して耐えられないのなら自覚しないほうがいい」というニュアンスを感じとることができます。

さて、私たちは自覚したとして耐えることができるのでしょうか。自覚したときパニックになるようでは、その資格はなかったといえるでしょう。ゲーム内では、自覚した者には暴れ出す者もいるといいます。しかもその被害は甚大なものになるようです。

半端に真実を伝えることは有害

たとえば現実世界で自覚した人が「前世」の真実を皆に教えようとして、「前世」や「自覚」といった言葉自体を広めたとしましょう。その広めようとした人は善意から真実を伝えようとしたのかもしれません。しかしまだ自覚する余裕・覚悟のない人々にまでその真実を広めてしまえば、それは混乱を招く行為になります。

そのため「むやみに真実を広める行為」も、自覚した者として不適切な行為だと考えることもできます。このときの問題点は「むやみに」というところです。覚悟ができた者に教えるのは、不適切とまではいえないでしょう。

真実を知らないことも不利益に繋がる

たとえばイザナイがガルルやヤコフ、スピーに「あんたたちはまだ自覚していない」と伝えてむりやり自覚させようとしたなら、おそらく簡単に裏世界へ連れて行けるでしょう。なぜなら自覚していない者、それも余裕も覚悟もない者にむりやり教えることは、パニックにさせて心に隙を生ませる行為であり、それを悪用して誤った方向へ誘導することができるからです(裏世界へ連れ込むように)。

以前から述べいる「住人たちに『死者』であり『自覚していない』という事実を伝えたほうがいいのではないか」という私の提案は、誰かだけを優遇し気まぐれで誰かだけに教えるという方法ではありません。死者の魂すべて一律に事実を教える、という平等性です。そのためむしろパニックを抑えることができます。

私たちは気をつけていないといけない

しかしこう考えてみるとこの「ミノニヨクシティ」というゲームは、「むやみに」自覚しろと勧めているようには見えません。自覚することは余裕・覚悟のない者には危険であり、さらにはサトリ・ミトリ・凶たちのように死者たちを管理する存在も悪ではないにせよ、「最善」でもないという示唆も含まれています。

この「ミノニヨクシティ」というゲームを現実の世界にまで適用して考えてみると、「予期しておけ」「身構えておけ」というメッセージにもうけとることができます。

昔、宇宙人が登場する映画「E.T.」や「エイリアン」が流行りました。UFOを回収したというロズウェル事件、そしてその事件と関係があるといわれるエリア51など、UFOおよび地球外生命体が話題になった時期がありました。当時から宇宙人が登場する映画は「将来、宇宙人の存在が公表されたときに精神的抵抗を減らすため」に作られたといわれることがありました。特に「E.T.」など友好的な宇宙人が登場する作品では、そういう考え方をする人もいたのです。

この「ミノニヨクシティ」というゲームも、いわば「宇宙人がいたとしても混乱するな」というメッセージを読みとるときの「E.T.」という作品に近いのかもしれません。「前世があったとして、まだ自覚していないとして、いずれ自覚しなくてはいけないとして、焦るな」と。

考察が及ばなかったもの

ここまでいろいろと考察してきましたが、私のなかで答えがどうしても出ずに理解できていないものが、少なくとも1つ挙げることができます。それは「きのこねくしょん」のキノコの屋根のひらがなです。

海底都市へ続く赤い屋根きのこは「み」、樹海クラブの集落や裏世界へ続く青い屋根きのこは「か」、ビル街へ続く黄色い屋根きのこは「ひ」、そして凶の都へ続く灰色屋根きのこは「し」と書いてあるように見えます。それぞれの街の頭文字は、解放される順に「か」「じゅ(し)」「ひ」「き」ですので、関連性が皆無なのではありませんが、しっかり合致するところがない上、赤の「み」の意味が通じないので、おそらく違うのでしょう。

またそれぞれの街から輪廻道へ繋がる和歌についても考慮して、和歌の合言葉や和歌自体の最初の1文字を比べてみたものの、どれも合致しない上、そもそも灰色きのこの凶の都からは輪廻道に繋がる入口がなく、当然ながらそれに対応する和歌もないのでこれも的外れでしょう。

またそれぞれのひらがなの元になった漢字を調べてみたものの順に「み=美」、「か=加」、「ひ=比」、「し=之」となり、これといって際立った意味がうかびあがることもありませんでした。

他に「み」「か」「ひ」「し」をアナグラムにして順序を入れ替えるというのも考えてみましたが、あまり意味はないようです。一応アナグラムのすべての文字列を列記しておきます。

    • み・か
      • み・か・ひ・し
      • み・か・し・ひ
    • み・ひ
      • み・ひ・か・し
      • み・ひ・し・か
    • み・し
      • み・し・か・ひ
      • み・し・ひ・か
    • か・み
      • か・み・ひ・し
      • か・み・し・ひ
    • か・ひ
      • か・ひ・み・し
      • か・ひ・し・み
    • か・し
      • か・し・み・ひ
      • か・し・ひ・み
    • ひ・み
      • ひ・み・か・し
      • ひ・み・し・か
    • ひ・か
      • ひ・か・み・し
      • ひ・か・し・み
    • ひ・し
      • ひ・し・み・か
      • ひ・し・か・み
    • し・み
      • し・み・か・ひ
      • し・み・ひ・か
    • し・か
      • し・か・み・ひ
      • し・か・ひ・み
    • し・ひ
      • し・ひ・み・か
      • し・ひ・か・み

こうした勘繰りではなく、「み=ミノニヨクシティ」、「か=海底都市」、「ひ=ビル街」、「し=集落(もしくは死)」と捉えることもできますが、赤の屋根が海底都市に繋がっているにもかかわらず「み」で、樹海クラブの集落に繋がっているはずの青の屋根が「か」になっているなど、とてもちぐはぐになってしまいます。

また「いろは歌」の「いろはにほへと」や、1(ひ)・2(ふ)・3(み)・4(よ)・5(い)・6(む)・7(な)なども考えてみましたが、あまり合いそうにはありません。

結局この屋根のひらがなに関する情報がないため、ほぼクイズのようになってしまっています。こうしたものは最初のインスピレーションが大事かと思われます。私には、これの正解がまったく思い当たりませんでした。

さいごに

この「ミノニヨクシティ」の考察は、このサイトの今までのコンテンツとして最長のものとなりました。皮肉なことに、ミノニヨクシティ本編をすべてプレイするより、この考察をすべて読むほうがずっと時間がかかってしまうでしょう。

これを読んだ方には、「こんな考察 間違ってるよ」だとか「筋違いの話してるなー」と感じた方もおられることでしょう。それで構いません。人によって解釈が違ってこそ、「考察」なのです。もし明確に反論できる点があれば、私に対してでなくても考察記事を投稿するなどすればいいのではないでしょうか。それは「ミノニヨクシティ」の話題を再燃させることに繋がるかもしれません。

既プレイの方でも、またプレイしたくなった方のためにリンクを掲載しておきます。またプレイすることで、私が考察してきた内容とは別の真実が見えてくるかもしれませんね。

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